2017年3月10日金曜日

『La La Land』 -圧倒的な演出力

 『セッション』のデイミアン・チャゼル監督作品ということで、新作のニュースの時から気に留めていたのだが、その後、アカデミー賞レースで大注目となった。先日の映画館通いの際にも、予告編で観るたび、これはいずれ、と思っていたのだが、タイミングが合って娘と出かけられることになった。

 さて、冒頭のハイウェイ・ダンスからもうすっかりやられた。なんという圧倒的な演出力なのだ。縦横無尽に空間を移動するカメラの前で繰り広げられる歌とダンスのあまりのクオリティ。
 どれほどの手間がかかっているのだろう。ワン・カットに見えるだけで実際にはあちこちに巧妙な切れ目があって、いくつものカットをつないでいるのかもしれないが、それにしたところで各カットをどう撮るか、構想するだけでも膨大な手間がかかっているように思える。さらにそれをつないで、長い長いワン・カットに見せるよう、全体を構成するのだ。
 そしてできあがっているこのシーンは、偉大な創作物を見せられる目も眩むような感動と多幸感に満ちている。

 もう一カ所、夕暮れのロサンジェルスの街を見下ろす丘の上で繰り広げられるダンス・シーンも、観ながら昂揚感にとらわれたのだが、それがどこからもたらされるのか、分析はできない。ポスターやCFなどに使われる二人のポーズのシンメトリィなども実に見事だが、だからなんなんだ。それがどうしてこういう昂揚感につながるのかわからない。
 ただ、先日の『シカゴ』も、やはり見事な創作物だと思いつつ楽しめなかったのに比べて、『La La Land』がそれに成功しているのは何故なんだろうとは思う。物語のドラマ性は、さすがに『シカゴ』よりも『La La Land』の方が確かだが、それよりもこの興奮は映画館で観るというシチュエーションに拠っているのだろうか。

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