2016年8月14日日曜日

『ブレイクアウト』 -残念なサスペンス映画

 原題の『Trespass』(不法侵入)では何のことやらわからんから、またしても邦題なのに英語という。
 先にネットで評判を見ておけば良かった。ニコラス・ケイジにニコール・キッドマンという顔合わせに「巨匠のしかける予測不可能なサスペンス」とかいう煽り文句で観てしまったが、ネットでの評判はすこぶる悪い。ジョエル・シュマッカーは量産監督としては悪くない仕事をしているんだろうが、こういうのを「巨匠」と呼ぶのはどうもなあ。
 なるほど、展開は次から次へと「予想」するより先に動いていくから、退屈する暇はないが、といって、先のことを「期待」したりさせていないから、サスペンスもさほどないし、カタルシスもない。
 強盗に押し入られて夫婦が捕まっている状態で、娘がこっそりパーティーに行くために家を抜け出しているから、自由に動ける娘をどう使うかはストーリー上の重要な要素なのに、帰ってきてあっさり捕まる。ある意味で「予想」を裏切っているが、むろん悪い意味でだ。
 総じてそういった展開が続いて、やはりニコラス・ケイジにニコール・キッドマンが助かるのはお約束だから、どうもハラハラした挙げ句のカタルシスには至らない。
 腹立たしい日本製のバカ映画と違って、金もかかっているし、それなりにストーリーテリング上も工夫をこらそうという意志は見えるのに、結局うまくいっていないことを制作途中で誰かが指摘して軌道修正できないのか、腹が立つというより残念な気がする作品である。ニコール・キッドマンの美貌には感嘆したが、それだけで高評価する気になれないのは、映画がやはり総合芸術だからだ。

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