2015年5月7日木曜日

『人狼ゲーム』(監督:熊坂出)

 偶然だが『パーフェクト・ホスト』に続いて、いわゆる「ソリッド・シチュエーション・スリラー(SSS)」の一本。好物だ。『インシテミル』(監督:中田秀夫)も、その設定から期待して観て、そのつまらなさに愕然としたものだが(未読の原作は米澤穂信だから、そんなにつまらないはずはないと信じている)、こちらはまあ期待値が低かった分、がっかりはしなかった。
 というよりむしろ、娘とともに大いに楽しんだ。あちこちで一時停止をしながら、真相を推理したりしたのだ。そういう楽しみ方でもしないと、映画そのものがもつ緊迫感やドラマの強さだけでは、やっぱりものたりない。
 もともとのゲームは子供たちと2、3回したことがあるだけで、どこを考えるべきかという勘所がわかるまでに至っていない。だが映画のように、ゲーム内の純論理というだけでなく、メタレベルの外部の論理を前提にすると、考慮しなければならない条件が飛躍的に複雑になることが、ちょっと考えてみてもすぐにわかる。これは時間をかければ「カイジ」や「DEATH NOTE」のような複雑な論理ゲームのドラマ性を追求することが可能な設定だ。
 もちろん、この映画はそこまでの作り込みはされているわけではなかったが、そうなる可能性へ通ずるワクワク感を感じさせてくれたところで、好印象を持ったのだった。
 惜しむらくは、ゲームの外部が存在しているにもかかわらず、登場人物達がいささかすぐにゲームのルールを受け入れてしまう。建物の内部の調査や、脱出方法の検討などが充分に描かれているとは思えない(充分に、である。それなりに描いてはいる)。その「メタ」な論理を物語に組み込むのは、制御が難しいのはわかるが、それをやればこうした「シチュエーション・スリラー」は、いくらでも面白くなりそうなのだが。

 ところで山田悠介が「バトルロワイヤル」をパクって以来か、この手のお話は、小説にしろ映画にしろ、俄かに増えたような気がするのだが、「王様ゲーム」「×ゲーム」「ジョーカー・ゲーム」「生贄のジレンマ」あたり、ちょっとまとめて観てみたくなった。うーん、実現に向けてどこかで時間がとれるんだろうか。楽しそうではある。それぞれは単独ではあまり期待はしないが、こういう企画の上でなら。

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